Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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396と369

「お帰りー、この書類の此処の欄お願いねー」
という言葉に、一瞬気が遠くなる瑚月さん


「・・・今日は・・・なんて日なんでしょう」


瑚月さんが訪問看護の事務所に帰ってきたのはスタッフで一番最後。
何故か最遠方の患者様を担当する率が高いので、
帰ってくるのも遅くなるのは当たり前。


今日はそれに加えて・・・


使用している車のドアが午後から急に助手席以外開かなくなったのだ。



え?どうやって乗り降りしたかって?


助手席からですよ
年甲斐もなく、大きな鞄を担ぎ、サイドブレーキ乗り越えてですよ。
1回、肘鉄でクラクション鳴らしたのはご愛嬌というものです。


追加書類を受け取り、
とにかく、法人の車メンテの方に電話。



ええ、少しでも早く運転席から乗り降りしたいですもの!!!!



お、この時間捕まらない事が殆どで駄目元でかけたのですが繋がりました。
そして、ラッキーな事に明日のAMは台車があるので修理出来るとのこと。



救われたぁ・・・

肩を落としてほっとする瑚月さん。


振り返ると・・・


うぬ、何だかんだいって、
トラブル続きの「今日」だけど、
言い換えると最後は何とかなっるって言うような「今日」であったのです。

********

そう午前中はもっと大変だったのです
午前中に行ったあるお宅でそれは起こりました。


そのご家庭はお二人暮らしなのですが、患者様は脳梗塞発症後の右片麻痺の方で加えて、
失語症の中でも言葉がうまく喋れず、「言い違え(錯語)」という症状が強く、
その他の症状から見守りが必要な方。

介護する家人も健康ではあるものの認知症で、
トンチンカンで不安になりやすいタイプの方。


そんな患者様が関節の運動をするために横になった際に目眩を起こしたのでした。
その際、いつもはない不整脈がありました・・・


も~~し~~~やぁぁぁぁ・・・・


と思い、家人に最近の水分摂取量を尋ねた処、
「嫌だって飲まない」との事で、殆ど飲んでいない。


ご本人の目眩自体は4~5分で収まりましたが、
表情や最近寝てばっかり居るという情報から「脱水」の二文字が離れない。


このままでは脱水性の脳梗塞再発の恐れがあるのではないか。
嫌な予感がして、上司に指示を仰ぎ、遠方のお子さんに現状報告をした結果、
「今日、受診させて下さい」となりました。


なにせ、微妙に認知症ペアーズのお二人。
では受診して下さい、
で、帰ることは出来ません。


まずは車椅子ごと乗れる「介護タクシー」を手配するために
担当のケアマネジャーに連絡・・・・・


つーかーまーらーなーいー


いざとなったら普通タクシーで行くか?と考えた処
電話がなった!やった連絡がついた!


ラッキー!!


が、タクシーの空きが無いという


つーかーまーらーなーいー


でケアマネジャーさんがこちらに向かっているという。
・・・ははははは


とにかく用意しよう!
ご家族!
ご家族の方!用意してください!!


オロオロするご家族に
*診察券
*保険書
*お金
があれば大丈夫と安心して頂く


合間に患者様に麦茶を飲んで頂く


いざとなったら普通タクシーで行くか?と考えた処
電話がなった!・・・うむ?デジャブ?



すると空きがなかったはずのタクシーが今こちらに向かっているという


・・・

・・・

らっきーーーーー!!!


家人さん鞄もった!
服も着た!

ぴんぽーん!

あ!タクシー到着した!!!


ご家族の方ーー
行きますよーーー


「ちょっとトイレー」


・・・おーい


けど、トイレは大切です…。


その間にいつもよりふらつく患者様を車いすに乗せて・・・


狭い上にストッパーが無くって閉まってくるドアをお尻でグイグイ押し開け外に出ます。
因みにこのお宅はマンションの上階の方で、タクシーは下のオートロックの前で待っているはず。


後はご家族とエレベーターに乗るのですが・・

・・・
・・・

家人、出てこない


まさか・・・


声をかけると・・・


お化粧してるやないかぁぁぁぁーーー
さっきのうちにしておいてぇぇぇぇ


と思いつつ、
車いすをタクシーに載せるのには少し時間が掛かるので
先に下に降りていると伝え、エントランスへ向かいます。


車いすに乗ったまま、患者様はタクシーの中に。
そこに家人登場!


あーりーがーとーーー
来てくれてありがと~
迎えに行かないと行けないかと思いましたぁぁぁぁぁ



タクシーの方に、こっそりとお二人の認知症具合を説明し、
出発したタクシーを見送った後、
急いで自分の車が置いてある駐車場(徒歩5分)に向かって走ります。


あのタクシーを追って下さい!
のシーンさながらですが、
タクシーいるはずもなく、とにかく病院に向かいます。


といって、今の家人の状況では病院の受付も危ぶまれます。
どうする?
となるのですが、そこは訪問看護を受けているお客様。


病院の救急で訪問看護師が待っていてくれるので、
タクシーの運転手さんも安心です。


急いで後追いした瑚月さん、
病院でケアマネジャーさんと患者様の受付を家人の方として下さってた訪問看護師さんと合流。


ほっとしたのもつかの間・・・
問題は意外な所にあったのでした・・・



時間はすでに午前11時45分


午前中の患者様の診察受付時間は済んでいるのですが、
すぐに見て下さる内科の先生が見つかりました

らっきーーーーー


瑚月さん、第一発見者なので先生に状況説明のために付き添いました。

が・・・・

その先生がいけてなかった・・・


アンラッキーぃぃぃぃーーー



***
臨時で外から応援に来て下さっているその内科の先生。
人の説明を聞いていない←


過去カルテの話は出てくるが、
肝心の点滴の「て」の字も出てこない


このまま検査だけで帰ったら、
脱水性の脳梗塞に成るかもしれない・・・
医師の診断にとやかくクレームを言えないので
心のなかで握り拳グー


後は祈る
きっとこの患者様に良いようになるはず
良いようになるはず

きっと良いように成るはず


何度か、思うことが口に出かかりますが、
言ったら行けないという心のストッパーが押しとどめました。


それから20分後・・・医師の診断は・・・

***

心電図と何だかんだ悩んでMRIをすることになりました。
点滴はなしです

***

MRIは予約いっぱいの処、
放射線科が頑張ってくださり12時20分からとなりました。


その間に心電図・・という事で
検査室にお連れし、検査技師さんに簡単に移動方法の見本をみせ、
注意点を説明し後を託します。



遅くなった午前中のカルテを煮え切らない頭で書きます。


受診までしてもらって、
このまま検査だけで帰るのか・・・


脱水が悪化したらどうしよう・・・
あの医者めぇぇぇぇ・・・

***

ご飯は持ってきていましたが、
どうにもやるせない心で、
それを何とかしたくって近くのコンビニでオニギリと焼き鳥を買いました・・・。



「396円です」


店員さんの言葉に瑚月ははっとなった。
396

ミクロ

並び替えたらミロク


レシートを片手に
瑚月さんの心の中に何か光が差したような気がしました。


・・・

・・・


きっと、
きっと良いようになる
396を信じよう


・・・
・・・

5分でご飯を口に押し込み、
昼のミーティングを済ませ、
緊急時の報告を今度は病院側の電子カルテに記載する為にカルテを開いた時、
瑚月さんは本当に396だったんだと知るのでした


其処にはこう記載されていました。



-新しい脳梗塞巣あり、入院ー



***

遅遅に帰ってきた瑚月に差し出された書類は、
訪問看護から病院側への申し送りの書類であった。


・・・今日、この件の報告、書くの3度目だぴょ~~~ん・・・


ちょっと遠い目になりかけている瑚月に
訪問看護ステーションの所長が声をかけてくれました



「よく気がついてくれたわね。ありがとう」



その時、『私だけじゃない』
そう瑚月さんは思いました。



遠隔地のお子さんが依頼しなければ動くことも出来なかった。

連絡の付かないケアマネもタクシーも繋がることが出来た。

ケアマネジャーは病院受診後、全部の検査の結果が終わるまで認知症で挙動不審になっている家人の横で付き添ってくれた。

あの医師じゃなかったらMRIを取らず、
逆に点滴だけで帰ったかもしれない。


技師さんが頑張ってくれてMRIをすぐに取れたからすぐ入院できた。


脳血管疾患は発症からの経過時間で、使用できる薬が変わってきます。
最短のものは発症から4.5時間以内しか使えない薬です。


なので、朝起きたら動きに悪くなっていた・・・という場合は適応できないのですが、
ご飯中に急に箸を落としたとか、
歩きにくくなった、など「発症時間がおおよそ分かる場合」は
必ず時間を覚えておいて医師に伝えてください。


この方の場合、既往歴が禁忌事項に触れていなければ十分セーフな時間帯です。
それだけでも今後の後遺症が変わってきます。


そして、たまたま事務所に居て、
随時報告を聞いてくれて指示してくれ、
患者様が到着して時に待機してくれていたのはこの所長さんです。
とてもとても、
こころ強い味方でした。


「こちらこそ、所長さんが居て下さって、迎えに出て下さって本当に助かりました。本当に、本当に有難うございました」



瑚月さんは深々とお辞儀をしました・・・。


ええ、何だかんだいって、
トラブル続きの「今日」だけど、
言い換えると
最後は何とかなっるって言うような「今日」でした。


そうして書くべきカルテを残し、
ヒラヒラと書類片手に近隣の母体病院に向かったのでありました。



***

・・・遅くなっただ・・・


書類+カルテ、その他事務でヘロヘロになった瑚月さん、
おまけに、その間に私用でちょっと大きく凹む事があったというおまけが付きました。


「・・・何か、美味しいものが食べたい・・・」


人間、美味しいものを食べると脳内から幸せホルモンが出るのです。
って、ホルモンに頼るのかぁぁぁぁ(涙


運転する中、私用の件をうだうだ考えていた瑚月さん、
スーパーの駐車場に止まった時に、ふと目に入った車の走行距離のメーターの後ろ3桁がこれでした


369


***

ああ

どうか
どうか


日常は色々あるかもしれないけど
思いがけない事が起きるかもしれないけど


私にも
貴方にも

信じている限り

こうやって
救いの手が待ち受けている日々であるという事を


信じ続けていける日々で有ることを
心から願うのです





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プロフィール

瑚月 kogetu

Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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