Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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『水際-みずぎわ』神世水奇譚完伝3

旧正月に月櫻に降りてきた「2016年」という年は、
どちらかに向かうかを選択しなければ行けない事が多々あるように思えた。

2016年はそう言う年で、それはやがて、
遠い未来の新しい指針へと繋がっていく
ターニングポイントの始まりのような気もするのである。

ただし、その選択には出来るなら考えて欲しい事がある。


********


「・・・劇眠い・・・」

大晦日を清々しい顔で終わったなら、
来る新年(旧正月)は晴れやかに過ごせそうなものだったが、
意に反してここ2日程、激烈に眠い日々を過ごしていた。



その眠たさは、患者様の宅に向かう途中の車で一瞬意識を失いそうに成る程で、
それこそ、せっかく黄泉平坂の瘴気から脱したのに、
瘴気汚染どころか、事故であの世に行ってはどうしようもないというレベルであった。



あまりに不自然な眠気にサーチしてみたが、
-月櫻自身の一部が何処かに行っているー
しか分からなかった。


しかし自ら赴いているのでも
連れ去られたようでもない。


何処にいるのか皆目検討がつかない。


…トンチ合戦は嫌だぞ・・・


何度か目のサーチで「古代神」という単語を拾ったが
以前のような人質状態ではないし、どうも関与が曖昧だ。


とにかく仕事に支障が出てはと
困り果てた月櫻は仏界にSOSを頼んでみた。



その日の深夜
月櫻は夢を見た。


***

見たこともない神殿。
大きな大きな人型のパーツを組み合わせていく。
大腿部・下腿部、前腕・上腕
左右それぞれに並べ、
もう1つ整えれば、後は繋ぐだけ。


という状態になって、月櫻は気がつく。
「これは古代神の身体だ。全部繋いではいけない」



その瞬間目が覚めた。



余りにも鮮明な夢であった。
いや・・
あれは夢ではない。
直感が告げる。
あれは行方不明の月櫻の一部がやっていることだ。
何処でやっているのだ?
とにかく取り戻さなければならない。



再び仏界に援助を願い、
どうするか考えているうちに眠気が襲ってくる



気が付くと、
その国の空の上に浮かんでいた。
足下に見える国とその住人はまるで、
RPGの中か、小説の世界であった。



しかし、分かるのである。
この世界は何処かに存在する世界であり、
地球とは違う世界だ。



違う星、
もしくは次元自体が違うのかもしれない。



月櫻の一部が何処かに行っていると確かにサーチはしたが、
よもや、小説もどきの世界に居たとは思いもしなかった。





小説


あー、最近はまってたんだよなぁ
「気がついたら異世界に転生していました系小説」を読むの・・・


空の上で月櫻は額に手を当てた。
頭痛い・・・
まさか、自分がそんな中二病世界に入るとは。


いやいや・・・
多分、この異世界を視覚化(ビジュアル化)するのに月櫻が持っている知識の中で
一番適したフィルターを使用してるのだ。
(ん?となると私が中二病か←)


なんにせ、あの古代神を再生するために、
こっちに連れてこられたらしい。


あの銭湯で抜けた感じは、なんてことない。
邪気が抜けたのではなく、自分のほうが引きぬかれたのだ。


一種の転生に近い状態異常であるから
サーチしにくかったのであろうのも頷ける。


橿原の地から解き放たれた古代神は
力を発揮できないように、四肢体幹を出来るだけ分離して封印されていたらしい。


-だから明確に古代神の姿を認識できなかったのか・・・-


今までそれを守っていた兵士達が封印解除の許しの言葉で昇天した時、
解き放たれた彼の神が最優先したのは「地球に来る前に居た世界に戻る」ことであったようだ。


しかし、この世界(地球・倭の地)でなされてバラバラになった身体は
同じ術式の方が元に戻りやすい。
そう気がついた古代神は封印解除の資格を持つ術者である月櫻を共に連れて行こうとした。


しかし月櫻のグランディングが思ったよりも強く、
最終的に魂の一部を持っていくことしか出来なかったのであろう。


こちらに連れてこられた当時、
月櫻の一部=こちらの月櫻は「月櫻としての」記憶が無かったようだ。


命じられるままに、古代神の再生の準備を行っていたが、
地球の月櫻に依頼を受けた仏界が、月櫻の分身を探しだし、
本体と意識を繋いだのだろう。


となると、ここは異世界でも
仏界が掌握しているエリアであり、
そうなると銀河連合に加入しているか、加入星域の近くに所属している世界なのであろう。


しかし気がついたからには
月櫻に、もうこれ以上あの古代神を再生するつもりも、
ここにとどまるつもりも無かった。


普通なら、元の世界で神として復活できるように手伝ってもいいとも思うのだが、
今回は違った。


一番最初に意識が戻った時、
「これは古代神だ」と言ったが
その「古代神」の文字には小説ならこんなルビが打たれるだろう。

「古代神(魔神)」と。


復活させることは出来ない。
この世界から帰ろう。
そう思った時



『~』


足下から呼ぶ声が聞こえる。
どうも「~」はこの世界での私の名のようだ。
そして呼んでいるものを知っている気がした。


その者の元にふわりと降りる。
しかし中に浮いたままだ。


『~・・・帰るのか?』
目の前の者は俗にいう「勇者レベル」だと何故かアリアリと分かる。
まじ小説か?


しかし、どうもそれなりの期間、
この世界に月櫻は居たようだ。


勇者であり司祭の役割もしているのだろうか。
魔神との関わりは分からないが、
魔神を再生しようとしている国の人間のようだった。


「ああ、私は私の世界に帰る。神は再生しない。
お前とのよしみだ、私に関わる記憶を消すか残すか、
お前の選択に任せよう」
月櫻はそう質問に対して選択で答えた。



その者は、しばし考え、目を伏せながらこういった。
「記憶を消してくれ」と。



月櫻はその言葉に軽い衝撃を受けた。
私のことを忘れてもいいのか?
私に忘れられてもいいのか?


胸の底にじんわりと湧く「寂しさ」と「悲しみ」


ああ、月櫻はどうも少なからずこの者に心を寄せていたのだろう。
そして、この者も同じように思いを寄せてくれていたと分かった。
なのに、忘れたいと言うのか・・・


そうか・・・忘れてもいい存在だったのか・・
そうだよな。
もう会えないなら覚えていないほうがいいよな・・・


そう思った時、その者が項垂れながら次に言った言葉は月櫻の予想を超えていた。

『記憶が残っていれば、~はまた召喚されてしまう。』


私の為だったのか?


自分は忘れたくない、けど、覚えていれば、
この世界が月櫻を覚えていれば、また召喚されてしまう。


月櫻の意に沿わぬ事をさせてしまうのであれば、
自分は忘れるという痛みの方を選ぶと言うのか。


こういう愛し方もあるのか・・・


深い感慨と忘れ去られる寂しさを胸に、
月櫻はその選択を受けいれた。


仏界の力により忘却の時が世界を覆った。


***

目が覚めてからも
暫く動けなかった。



「個人の選択」が世界を左右することがあるかもしれない。
あの人の決断は少なくともあの世界を左右するものであった。


世界よりも月櫻を選んでくれたとも言えるが、
あの人の事だ、多分、もっと深く考えているのだろう。


きっとあの人は、本当に必要なら自分たちの力で神を再生するべきだと決断したのであろう。
たとえそれが何十年かかっても。


そう。一見、月櫻よりの選択だが、
実は、あの世界と月櫻の両方を選んだ選択だったに違いない。


2016年は遠い未来に繋がる選択の年の始まりと冒頭に書いたが、
その選択には出来るなら考えて欲しい事がある。


*選択は「多くのものの中から、よいもの、目的にかなうものなどを選ぶこと。」という意味があるが、
実際の起こる重要な選択は二者択一を迫るものが多いだろう。


ただその時に出来るなら考えて欲しい。
どちらにも極端に偏らず、出来れば両方の選択肢を見据える目と考えを持つことを。


Aが良く、Bが悪いとBを切り捨てるのではなく、
Aの良さとBの良さも認めてAを選んで欲しい


もしAが途中で意に介さないものになろうとした時、
Bの良さも認めていれば、BやもしくはCという道が開くかもしれない。


こだわりと
偏見を選択によって生み出さないで欲しい。


Aに所属するなら、Bのものも認めて欲しい。
罪を憎んで人を憎まずと言うが、
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという選択は出来れば避けて欲しい。


アナタが自分の選択を尊ぶ様に、
アナタもその人も自分の人生の課題のうえで、選んだのだから。


さらに、「選択」の一つだとう思う例を上げるとしたら、


遠き世界の彼の人の様に、
Aを思い選択し、Bの為に己の力を向けるような、
両方ともを思う心で行う選択もあると知ってほしい。



彼の人も、遠い未来に繋がる選択した。
それも、2つの選択肢を活かすという最も難しい選択の一つをなしたのだ。


***

本当に夢奇譚だな・・・
朝日が差し込み始めた部屋の中で
月櫻は両手で顔を覆ったのであった。


つづく

◆水際
1 水面が陸地と接している所。みぎわ。「―の植物」
2 上陸する直前。「感染症の侵入を―で防ぐ」「―作戦」
3 物の、水面に接する所。また、船の喫水 (きっすい) 線。
4 生け花で、花材が水面に接するところ。
[補説]2は、島国ではなく地続きの地域でも、国内に入る直前のことを水際と言い表すことがある。

goo辞書より
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瑚月 kogetu

Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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