Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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『風前の灯(ふうぜんのともしび)』<泰-風奇譚- その壱>

・・・私は死ぬんかいな?・・・


眉間を潜めながら、月櫻はそう思った。


目の前にあるPCの画面には数日後のタイ旅行の為の海外旅行保険HPが写っていた。
今は最後のクリックをすればネット契約完了となる場面だ。


月櫻、これでも何回か海外には行っているので、
ネットでの海外旅行保険は経験済みである。
大抵は、一番安いプランに少し付属を足したもので申し込みをする。


今回もそうするつもりでいたのだが、
どうしても手がいつものプランをクリック出来ない。

言い知れぬ感覚が胸に浮かんでくるのだ。
うまく言えないが一番あっているとしたら、それは


-あぶない-


という感覚


結局、最終的に組み上がったプランは死亡補償金額が最高値のものであった。
自分が受け取るはずもない金。


けど、月櫻の上の存在もそのプランを押してきた。



「・・・・」
月櫻は何故か神妙な気分になりつつ、
ぽっちりとクリックした。


月櫻の財布は納得しなかったが、月櫻の心は納得していた。



***


「はあ?」
月櫻は携帯に向かって呆けた声をあげた。
出発一週間となるその日に、共にタイ旅行に行くはずの連れが
キャンセル料と一人旅の超過金を肩代わりしてもキャンセルしたいと言ってきたのだ。


嫌な予感はしてたんだ・・・。


連れは海外旅行は初めてであった。
パスポートを取る時点で面倒臭がって行かないと言い出すかと思っていたが、
それをクリアしたことで月櫻は安心していた。

・・・
それが甘かった。

連れの理由その1は「だって、デモあるやん」。

・・・

まて、私1人で行ってもデモはあるぞ?←


理由その2は「タイのるるぶ読んでたら満足しちゃった」

・・・

!?お前は二次元で満足するどこぞのオ◯クな奴か!?←
と心の中で思いっきり突っ込んだが、
結局は「面倒くさくなった」のであろうと月櫻は納得した。
マリッジブルーと、お出かけブルーは「実際の準備」の時に起きるものだ。

・・・

変電器も
携帯蚊取り線香も
常備薬も
ガイドブックも

全部私が用意しているではないか!

旅券の手配も
ホテルの手配も
トランジットも
買い物も
観光案内も

全部私がやったるではないか!。

・・・

しかし、時すでに遅し。
月櫻は生まれて初めて、
海外フリー&一人旅を行う事になったのであった。



もしあいつと今度一緒に旅行することがあったら
「パスポートと金と服と下着と歯ブラシだけもってこい」と言おう。
と心に誓ったのであった。



そして、旅行当日早朝


月櫻は何故か親友の家に車を留めていた。
予約した便に乗ろうと思うと、バスの始発前に家をでないと行けないのだが、
昨晩5件のタクシー会社に予約電話をかけ、5件とも見事に断られた。

タクシーは、所属する市町村内にしか迎えに来てくれない。
月櫻が住むのは奈良市内から15分ほど離れている。

しかも家から駅までは徒歩で歩けば30分だが、
タクシーでは6分ほどで着いてしまう短距離だ、
遠方から来ても見入りが少ない。

送迎のガソリン代も出ないかもしれない。
そう判断されたのだろう「もう予約で満員です」と言われて全社に断られたのだ。

一瞬、30分間ガラガラと荷物をもって歩くのかと思った時、
ふと思いついたのが友人宅であった。

調べると、すぐ近くのバス停にくる始発に乗れば、
乗りたかった電車に乗れる事がわかった。

深夜、理由を聞いた友人は快諾してくれ・・・、
「頼む」と言って、月櫻は親友に車の鍵と、それに一緒に着いている家の鍵を渡した。


友人はこれで旅先で無くす事はないなと笑ったが、
それを聞いて、月櫻は背中に寒いものを感じた。



空港には無事付き、
検査も受け、後は飛行機の出発時間を待つだけとなった。


待合の椅子に座り、
何やら考えていた月櫻はおもむろに携帯を取り出し、
数カ所にメールを打ち出した。

まずはキャンセルした連れへ。
もし旅先で何かあれば、連れと緊急連絡先になっている親に連絡が行く。
保険番号も連絡した。
現地で何かあっても救援費用が付帯しているプランである。

連れにはさらに、もし何か連絡があったら、
助手の奈桜に連絡をして欲しいと付け加えた。
お客様に迷惑がかからないように治療院の予約のキャンセル等をしなくてはならない。
そして、車の鍵と家の鍵は友人が持っているからとも。

もし、月櫻が鍵を持ったままであったなら
旅先で月櫻に何かあった時に親兄弟は車も動かせずに、
家の中に入ることもできない。

しかし、問題の鍵は友人が日本で管理してくれているのだから、
「何があっても後を安心して任せられる」状態に、意図せぬうちになっていたのである。

・・・

月櫻は遠い目をした。


それから意を決し、次に月櫻をよく理解してくれているある所に宛ててメールを打ち始めた。

***

どうも今回、かなり大きな変革なのか、帰ってこないようなイメージがある。

多分、事故で本体が死んでしまうとか言うのではなく、
今の私が今までと全く違う人生を歩みだすイメージがそう感じさせるのではないかと思っています。

海外保険も初めて一番高いやつに入ったよ。


死に近いようなものが待っている感覚があるのに、
それでもなお、タイに行くのはとても楽しいイメージなんだ。
とても不思議だよ。


念の為に、私の実家の電話番号を伝えておくよ。

***


メールを送った後、
最後に親に電話を掛けた。

「行ってくるよ。」

そう言って、電話を切ると丁度搭乗受付が始まった。
列に並び、もう数人という所で月櫻の携帯のバイブが鳴った。

おっと、切り忘れてたか。

見ると、先ほどメールを出した相手からの返信であった。

***

>かなり大きな変革

同感。

帰国しないとかはないだろうがな(笑。
、、、アジアルートの確立というか。


行きは、「乗り物」になっているから、
着くまで重いだろうな…と、ひっそり思いつつ


よい旅を!

***

メールを確認して電源を切る。
苦笑

さてさて、
鬱金(うこん)殿にもお墨付きを頂いてしまったか。

てか、アジアルートの確立ってなんなんですか???

・・・

まぁ・・・な・・・

ふと後ろと真上を見た月櫻はため息をついた。


「乗り物」と言われるとこの状態も納得するな。


<さあ、参りますか。>


月櫻は背後に無数にいる方々に合図をし、
ボーディング・ブリッジに足を踏み入れて行った。

***
『風前の灯(ふうぜんのともしび)』<泰-風奇譚- その壱>イメージソング

プロジェクトX
中島みゆき 地上の星【公式】





***
【風前の灯(ふうぜんのともしび)】
風の吹き渡る場所にある灯が今にも消えてしまいそうなことから、非常に心もとない状態をいう。また、はかない寿命のたとえともする。
「風前」とは、風の当たる場所のこと。

故事ことわざ辞典より

***
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Comment

Re: 『風前の灯(ふうぜんのともしび)』<泰-風奇譚- その壱> 

あのぉ・・どうなるんでしょう・・??

台風きてるし・・;

神世水奇譚読んだせいか、今回の台風もなんかあるんかなぁ・・とぼーっと思ってました

重たいんですね^^;
ちゃんとかえってきてくださーい!!

うめたろう

Re: 『風前の灯(ふうぜんのともしび)』<泰-風奇譚- その壱> 

なんかあるのかな っていうのは
なんか「意味」があるのかな っていうことで!
今回のにっぽんのお掃除コースは こっち! ・・とか
神様方が決めたのかしらん@@・・と・・
(まったく口の足りない野郎でしてm_m)

なにもないことを心から願ってます!
すこやかに無事通り過ぎてくださいますように

雨と風に感謝しつつ
被害の少ないことを祈ります

うめたろうでした

  • posted by うめたろう 
  • URL 
  • 2014.07/09 11:27分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re:うめたろうさん 

台風・地震等、天災と言われますが、
昨今では人災の末…とも言える災害が増えてきていると思います。

台風も温暖化や海流の変化なども無縁ではなく、
世界は繋がっていますし色々な国々や人々の自然に対する行いによって、
「自然に」酷くなったり、過度に発生するものもあると思います。

これは次の記事に書こうと思っていますが、
私が感知している俗にいう神様の世界は階層というか、
範囲があります。


その地域を守る鎮守様やお寺、自然精霊、彼らは地域の班の様な感じ。
それより大きくなると、地方自治体レベル、
そして国会レベルとなります。

(天使さんとかは、宇宙系ですので宇宙連合とかいう感じで、
地球の色々な神界はそれに対して地方自治体・国会議員ですね)


それぞれの国や地方で頑張っている神様方が居られ、
非常時には地域を越えて、一致団結などされます。

台風が生まれるのは遠い南の海です。

日本の神様のエリア外です。
そしてすべての生物に甚大な被害をもたらす可能性のある
台風8号の進路や勢力、進行速度を変えられないかと
色々な存在の方々が今、すごく頑張って居られます。

今回の記事がすこーしリンクしているとしたら、
私の白日夢ですが、進行速度や進路を少しでも変えられないかと、
偏西風等の気流を調整して頂けないか、アジアラインの神々にお願いしています。
・・・というだけでしょうか。

(気流も全世界レベルで動いている地球の空気の流れですので、
一部分だけを突起して変える事は他の生態系にも影響がでるので難しいのです)。

私の願いなど本当に微々たるものですが、
日本でも人~神に至る大勢の方々が表には出てませんが、
今、自分が出来る事をされています。

後は、自分が慌てないように懐中電灯や飲み物を用意したり、
訪問の患者様には声掛けをしたりしてますですねw。


一人一人が出来る事、
自分が何を出来るか、
今はそれを見つめ、もし宜しければ
目に見えないけど凄く頑張っておられる存在に言葉をかけて頂けたらと、
願うものでございます。



  • posted by 瑚月 kogetu 
  • URL 
  • 2014.07/09 21:38分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: 『風前の灯(ふうぜんのともしび)』<泰-風奇譚- その壱> 

そうなんだ・・! 

お忙しい方なのに、つぶやきみたいなコメントに丁寧にお返事くださってありがとうございます。

お祈りします

伝えてくださってありがとうございます!


うめたろう
  • posted by うめたろう 
  • URL 
  • 2014.07/10 11:44分 
  • [Edit]
  • [Res]

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瑚月 kogetu

Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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