2014.06/16 [Mon]
『談論風発』<泰-風奇譚- プロローグ>
言葉なきもの、世に存在せぬとされるものを “耳で視、目で聴く耳視師”月櫻(つきお)。
耳視師月櫻が語りし事、そは全ては白日夢(はくじつむ)の中の事とご理解いただたく候。
白日夢奇譚ここに再び参上。
***************************************
梅雨に入ったが天気が続く奈良。
しかし今日は朝から、とても爽やかな風が吹いていた。
「今日は凄くいい風ですねー」
助手の奈桜(なお)は午前の最後の客を見送った後、
店の入り口で大きく深呼吸をしながらそういった。
「風か…」
その声に惹かれて同じく外に出た月櫻(つきお)は眩しい日差しに手をかざしながらも
頬を撫ぜる清々しい中に、ほっとさせる優しさを感じる風を楽しんだ。
「…何か今日の様な気がする…」
「え?何がですか?」
ぼっつっと呟いた月櫻の言葉に奈桜が反応したが、
月櫻は笑みを返すだけで、また店の中へと戻っていった。
***
今日、家に帰ったら「あの」ワインを開けよう。
月櫻はそう思った。
***
昨年の12月、月櫻は初めてツアーでないフリーの旅にして初めての一人旅行に出発した。
そして、タイをめぐる数奇な旅の最後の最後の締めくくりに、自分の元にやって来た一本のワインがあった。
いつ開けようか、
誰と開けようかと思っていたが…
・・・
・・・
今でしょ今 という気がしたのだ。
***
この前の満月は100年に1度の「ハニー・ムーン」であった。
**ハニー・ムーンとは-http://entermeus.com/102745/より転載-**
6月13日(金)は「ハニームーン」と呼ばれる月が世界各地で観測された。ハニームーンというのは「月が赤く染まるほど低位置で昇ってくる」月で、13日の金曜日という不吉な日に重なるというのも約100年に1度しか起こらないそうだ。
******
しかもこの日は13日13時13分に満月に入った。
なんと13が3つ重なった日だったのである。
不思議さに13という数字を調べてみた月櫻はこんな記事を見つけた。
>「13」とは…。1年に月の周期が13回あるように、神聖な女性性や女神、そして直観的な面を意味している
月の周期も13なのか…と思ったが、
月櫻がタイに出発した日も「13日」だったのだ。
タイ
多くの人を魅了する国。
魅了された人々にも、
その人々を引きつける彼の国にも、
月櫻なりに納得する理由がそこにはあったのである。
それはタイという国だけのものなのか、
天使の町と云われるバンコクだけなのか、
それとも、月櫻が今惹かれているチェンマイにもあるのか、
はたまたミャンマーなど隣接する国々にもある「力」なのかは分からない。
ただ、それ故に、月櫻はかの国に行ったのであり、
そして又、
機会があればかの国に行きたいと望んでいる。
思えばここ数日タイづいていた。
タイで散々飲んだスイカスムージーの香りが何故か此処数日、鼻に香ってきて不思議であったり、
叔母から届いた手紙がバンコクのホテルの便箋だったり(叔母、便箋持って帰ってきたな←)。
格安のフリープランが出てきたり…。
ワインを見つめながら考えにふけっていた月櫻に向かって、
開けてあった窓から一陣の風が吹き込んだ。
風
そう、この旅のキーワードの1つは「風」にまつわる旅であった。
今月13日のハニー・ムーンでタイに出発してから丁度半年が過ぎた事になり、
なおかつ12月16日はタイを出発した日でもあった。
今日で丁度半年になるのだ。
今まで流れる「時」を「水」に例えていたが、
この様に自在に重なりあう様は「風」に例えてもいいのかもしれない。
ワインを開けるのも、
あの奇譚の扉を開けるのも、
まるでタイでの日々の様な、こんな風が吹く今日がいいような気がする。
さて、これから少し間、
我が語りし奇譚にお付き合い頂けますなら、不祥耳視師月櫻、誠に幸いでございまする。
***
【談論風発-だん ろんふうはつ】
はなしや議論を活発に行うこと。 「 -して時の過ぎるのを忘れる」
-Wiktionary日本語版より-
***
耳視師月櫻が語りし事、そは全ては白日夢(はくじつむ)の中の事とご理解いただたく候。
白日夢奇譚ここに再び参上。
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梅雨に入ったが天気が続く奈良。
しかし今日は朝から、とても爽やかな風が吹いていた。
「今日は凄くいい風ですねー」
助手の奈桜(なお)は午前の最後の客を見送った後、
店の入り口で大きく深呼吸をしながらそういった。
「風か…」
その声に惹かれて同じく外に出た月櫻(つきお)は眩しい日差しに手をかざしながらも
頬を撫ぜる清々しい中に、ほっとさせる優しさを感じる風を楽しんだ。
「…何か今日の様な気がする…」
「え?何がですか?」
ぼっつっと呟いた月櫻の言葉に奈桜が反応したが、
月櫻は笑みを返すだけで、また店の中へと戻っていった。
***
今日、家に帰ったら「あの」ワインを開けよう。
月櫻はそう思った。
***
昨年の12月、月櫻は初めてツアーでないフリーの旅にして初めての一人旅行に出発した。
そして、タイをめぐる数奇な旅の最後の最後の締めくくりに、自分の元にやって来た一本のワインがあった。
いつ開けようか、
誰と開けようかと思っていたが…
・・・
・・・
今でしょ今 という気がしたのだ。
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この前の満月は100年に1度の「ハニー・ムーン」であった。
**ハニー・ムーンとは-http://entermeus.com/102745/より転載-**
6月13日(金)は「ハニームーン」と呼ばれる月が世界各地で観測された。ハニームーンというのは「月が赤く染まるほど低位置で昇ってくる」月で、13日の金曜日という不吉な日に重なるというのも約100年に1度しか起こらないそうだ。
******
しかもこの日は13日13時13分に満月に入った。
なんと13が3つ重なった日だったのである。
不思議さに13という数字を調べてみた月櫻はこんな記事を見つけた。
>「13」とは…。1年に月の周期が13回あるように、神聖な女性性や女神、そして直観的な面を意味している
月の周期も13なのか…と思ったが、
月櫻がタイに出発した日も「13日」だったのだ。
タイ
多くの人を魅了する国。
魅了された人々にも、
その人々を引きつける彼の国にも、
月櫻なりに納得する理由がそこにはあったのである。
それはタイという国だけのものなのか、
天使の町と云われるバンコクだけなのか、
それとも、月櫻が今惹かれているチェンマイにもあるのか、
はたまたミャンマーなど隣接する国々にもある「力」なのかは分からない。
ただ、それ故に、月櫻はかの国に行ったのであり、
そして又、
機会があればかの国に行きたいと望んでいる。
思えばここ数日タイづいていた。
タイで散々飲んだスイカスムージーの香りが何故か此処数日、鼻に香ってきて不思議であったり、
叔母から届いた手紙がバンコクのホテルの便箋だったり(叔母、便箋持って帰ってきたな←)。
格安のフリープランが出てきたり…。
ワインを見つめながら考えにふけっていた月櫻に向かって、
開けてあった窓から一陣の風が吹き込んだ。
風
そう、この旅のキーワードの1つは「風」にまつわる旅であった。
今月13日のハニー・ムーンでタイに出発してから丁度半年が過ぎた事になり、
なおかつ12月16日はタイを出発した日でもあった。
今日で丁度半年になるのだ。
今まで流れる「時」を「水」に例えていたが、
この様に自在に重なりあう様は「風」に例えてもいいのかもしれない。
ワインを開けるのも、
あの奇譚の扉を開けるのも、
まるでタイでの日々の様な、こんな風が吹く今日がいいような気がする。
さて、これから少し間、
我が語りし奇譚にお付き合い頂けますなら、不祥耳視師月櫻、誠に幸いでございまする。
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【談論風発-だん ろんふうはつ】
はなしや議論を活発に行うこと。 「 -して時の過ぎるのを忘れる」
-Wiktionary日本語版より-
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