Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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守護霊降臨-守護霊奇譚その伍

音次郎さんと花子さんご夫婦が掘り当てた温泉。
故にお二人の名前をとって「音の花温泉」と言う。


と、前に瑚月が言っていたな。
昼食後、二人は次の目的地である生駒市の日帰り温泉に向かっていた。
守護霊交代には「魄」でのアプローチがポイントと言われていた。
多分、ここで何かあるのであろう。


奈良の温泉の泉質はナトリウム-炭酸水素塩温泉=ぬるっとした質感の湯が多い。
温泉好きな瑚月から、特質のある日帰り温泉を幾つか教えて貰っているが、
音の花温泉もその1つだ。


特質するとすれば、露天風呂の広さである。
奈良県下一を誇るというそれは確かに広く…、
屋根組の太い柱は実に堂々としたもので石と木の調和に日常の喧騒を忘れる…。


浴場に中に入ると、外気との寒暖の差の為に湯煙で2m先も見えない有り様。
風呂に入って少し奥に行けば、人影も霞んで見えなくなる程であった。


「「くぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー」」


二人の口からため息がもれる。
冷えた体を解きほぐす。


「溶ける…」
「溶けろ、骨は拾ってやる」
「骨も溶ける…」


宝山寺はいい所なのだが、
生駒市内に雪がなくても寺の中にある…という修験道にうってつけの「寒所」である。

奈良に住んで5年目になる月櫻はかなりこちらの寒さに慣れてきたが、
慣れぬ県外者には心底冷える寒さであったろう。


温まった後に体を洗う。
この温泉には付属のシャンプーや石鹸はないので皆、自前の物を用意してくる。


今回は瑚月に協力してもらって、
とある混合ハーブ入りのシャンプーを用意してある。


「くぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー」
ガシガシと髪を洗う乱麻が尋ねる。

「月やん、もう一回洗ってもいい?」
「ああ。遠慮無く使え」

「いつも子らと入るんやけどな、あいつらゆっくり髪も洗わせてくれへんねん。
いつか毛根詰まってハゲるぞっーーて子らに言ってるんや」
「…ハゲないで…。好きなだけ洗っておくれ(ほろり)」


ゆっくり髪洗えるなんて幸せだーーーーーーーーーーーーー。
めっさ、幸せだーーーーーーーーーーーーーーーー。


ガシガシガシガシ
と、洗いう乱麻。

子煩悩な乱麻の事だ。
3人の男の子と一緒の風呂はさぞやにぎやかしいのであろう。


体も洗い、スッキリした所で露天に向かう。
音次郎さんと花子さんの息子の一人は土建業者なだけあって、
露天の石組みは中々である。


腰掛け石に坐ると腰湯や足湯になる。


ゆっくりした時間の中、
空から白いものが舞い降りてきた。


「雪か…」



こちらでも珍しい牡丹雪。
ふわりふわりと舞い降りるそれは、
空一面に広がる白い羽根の様であった。
静けさと美しさに二人共言葉を無くしてただただ見つめていた。



あ…。
月櫻は息を飲んだ。



純白の羽根のような雪を従え、
白い服を着たその人は、
月櫻にゆっくりと頭をたれ、拝を捧げた。



守護霊降臨。






なんて
ドラマチック←。




***


「…一人増えたぞ…」

音の花温泉を出た月櫻らは、
駅に向かう竜田川沿いの店に入った。


ヴィラージュ 川端


大輔花子の花子さんが非常にお気に入りで有名な店である。
しかし「高い」と聞いていたので未だかつて入ったことがなかった。



今回は「食」は大きな問題ではないようで、
昼食もティータイムの場所も一番重要視されたのは「時間ロスのない工程」であった。



指定された時間内で、
依頼者に安心した時を過ごしてもらう。
その為に「移動時間」で心配を掛けさせてはいけない。
という事が重要視されたようだ。



しかし、それでも幾つかある店の中で「OK」を貰うだけはあり、
店の中の雰囲気は良かった。



乱麻には昼食時に今回のコースを組んだ目的は話していた。

「へぇぇぇ。一人増えたんだ。どんな人?」乱麻は笑った。
「乱麻の過去生の友人の繋がりだな…。中国系、三国志のような戦国時代の人かな。
かなり頭が良さそうだ。」
「過去生?」


過去生という言葉の意味も説明を要する位、
乱麻は俗にに言うスピリチュアルには疎い

「今回は、体にアプローチしろと言われたんだ」
そんな乱麻ではあるが、そう言う月櫻に、深く頷いた。


「なんかさ、風呂入ってる途中から、なんか…こう、ぐーっと力が湧いてくる感じがしたよ。
確かに、元気になったような気がする」


温泉には質があり、それに見合った経絡的な内蔵への働き掛けがあるが、
今回は泉質自体に注文はなかった。


複数回の洗髪による、頭部血流の増加。
寒暖の差や腰湯等による交感神経への働きかけ。
雪という非日常的な視覚的演出。
日常と違う旅情気分による精神の開放。


幸福物質であるセロトニンを皮切りに、
乱麻の内蔵ホルモンが正の循環を高めた瞬間に…。


乱麻のオーラフィールドが今までの外郭を打ち破り、
一気に広がった。

その時、「その人」は降りてきたのだ。


珈琲を飲みながら、
乱麻と月櫻は話を続ける。

「休みに友達から誘いがあっても、疲れきっている時は断るんだよ。」
「ああ」
「最近、どうも誘いに乗る気がしなくってさ。疲れていると思っていた。けどさ…」
「けど?」
「なんか月やんにだけは猛烈に会いたくなったんだ。
何がなんでも会いたくなったんだよ。
こんな遠くにさ、これちまっったんだよな。それって、実は体力はあったってことかな?」



ああ…

月櫻は微笑んだ。
それはセッションやプライベートならに縁がある人からよく聞く言葉であった。
何かに導かれるように…。
いや、実際に強い何かに背中を押されてやってくる。


そしてそういう時は、
その人にとって大事な「転換期」でもある。
朋の大事な転換期に少しでも手伝えた事が月櫻にはとても嬉しかった。


多分、乱麻は無意識に自分が転換期であると感じていたのであろう。
守護が交代するような大事な時期は、個人の感情や場の状況などのエネルギーに影響を受けやすい。

万が一マイナスな場の影響を受ければ、
降りてくる人の「性質」にも影響を与えかねない。


だから、他の友人の誘いで安易に出歩く事をセーブし、
一番安定していた「我が家」という「殻」の中で充電をしていたのだ。



そして、場と時が整い…、
雛が孵化するときに己の殻を内部から打ち破る力が必要な様に…。
上昇した乱麻の魄の力が、古いオーラフィールドを打ち破ったのである。


「月やん」
「ん?」
「色々な友達がいるけどさ…」
「うん」
「自分が一番ほっとしたいとかさ、心から話したい時に浮かぶのは月やんなんや…」







「なっ…、照れるじゃ…な、…えっ、えーと」
アタフタとする月櫻。
顔が熱くなってくる感じが自分でも分かる。


乱麻にこんなに面と向かって言われたのは初めてだった。
快刀乱麻の2つ名にふさわしく常にクールさがあり、それが裏表のない清々しさでもあった。



「じゃあな!」
「ああ。また会おう!」

生駒南口ロータリーは車を止める場所に困る。
すぐ後ろに迫るタクシーの為に、月櫻はドアが閉まると同時に挨拶も早々に車を出した。

瞬殺の別れ。
時刻は15時52分であった。


10時03分合流。
15時52分に旅立ち。

「依頼条件の10時から16時まで」をしっかりと守って乱麻への「プライベートなら」は終了した。


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Comment

面白かったです♪ 

面白かったです♪私は近くには、見えるひといないんですが、瑚月さんが書いてあるこの内容読んでたら、私も退職やら出産やら、新しい今の職場に入るときに、背後の方たちが色々頑張ってくれたんだろうな~と思って、嬉しかったというか、元気づけられたというか…

ありがとうございます!

また更新楽しみにしています。
  • posted by 透子 
  • URL 
  • 2014.02/16 07:12分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re:透子さん 

ありがとうございます。

守護霊さん…皆に必ず居られる方々です。
守護霊さん以外でもその時その時でご先祖様も応援してくれていたと思います。

一番身近な方ですから、声掛けして応援してもらってみてくださいw
  • posted by 瑚月 kogetu 
  • URL 
  • 2014.02/16 19:42分 
  • [Edit]
  • [Res]

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Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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