Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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産み出る願い-日ノ本神霊紀行その伍

人が神を慕うように、
神も人を愛す。


出自が人であった神も
自然界である神も
宇宙(そら)から来た神も



氏神や小さな祠を守る「感情」が残っている神はもちろん
公-おおやけ-を律とする神も
好き嫌いがある神も



ふと、
固有の人を愛してしまう時がある。



消え行くロウソクの一瞬の煌きがまばゆいように、
集で生き合う弱き者故に、一瞬見せるその心の強い輝きに見入る方も居れば、
ふと漏らした春風のような言葉や、
たおやかな手の暖かさに、かけがえの無い愛しさを感じる方もいよう。



だが、人の生は神からみたら一陣の風の如きもの。



愛したものを失うのは、
地に根ざして生きる「感情のある神」にとっても、
けっして平気なことでは無い。



だから地の神は愛したものの魂(転生)や、
愛したものの家系(魄-DNA)を愛しむ。



その為にも、彼の者を生み出し、育てた土地を守り、愛する。
「人」は大地の恵みから生まれるのだから。


***

三つ目殿の件が片付きやっと咳から開放されるかと思った月櫻だが、
事態はまだ収まっていなかった。



三つ目殿とは違い、御方々は流石に日中は空気を読んでおり、
月櫻が用事を全て終えて床に着いたら「咳コール」をかけて来られるようになったのである。


そして、今度は彼らの説得が始まったのである。
咳も収まりつつあるが、なんだかんだと二週間近くになっていた。


****


「だから、…生み出して下さい」
そう月櫻は言った。


-わすれられることが いちばん つらいのだ-
と、月櫻を引きこもうとする神の一柱が言った。



ならば尚更…

貴方の詞、貴方の愛を、貴方の存在を伝える者を求めるのであれば、
もう待ったり、地縁を保たぬものを無理やり引きこむのではなく…。
貴方方が力あるうちに、『産み出しなさい』と。月櫻は話した。


****

四国の神界は複雑だ…。

それは、人により生じた多種の結界と多様な神々の世代交代によって複雑化した関西とは全く別のものであるように思う。


先の話にも書いたが、

剣山系は、神降ろしや、
神の声を聞いて生活の基板にしていた縄文~弥生につながる文化がまだかろうじて残っている古い地域である。

また、四国にはかつては宇宙(そら)から来た仙界や妖界の方々も多く、
己が一族と地を守っている。


その上で、仏界の力を使ってそれらの統一を図ろうとした空海の「寺と遍路」という強大なパワーシステムが絡みあっている。


もしかして空海のそれは、
仏界の力により古代神達を平定した奈良を見本としたのかもしれない。


ただ、人の祈りの輪(和)で四国という大島全体を包み込むという遍路のシステムを考え出した空海の想いは筆舌に尽くし難いレベルだ。



故に、その猛威に対して剣山殿などが「わが地」を守ろうとしてきた事が、
「三大秘境」と呼ばれる結界を強めて来たという事もあるであろう。


そしてその土台が、
三つ目殿や平家の落人の様に、
隠れ里という特殊な環境を作り出しても行ったのかもしれない。


『宣託は基本「あまねく」でなければね…徐々に巫が濁る。
そういうものだから。

平家の落人の隠れ里という特異な地だったから、如何せん託宣は一族の為にのみになっていったこと、その限定性が良くなかったのだろう。
それも仕方のないことだったんだろうが…。』


三つ目殿の件の報告をした時に、
鬱金殿はそう言っていた。



月櫻はそれを思い出し言葉を続けた。

「そう、閉鎖した土台は人払いによる「人材不足」を生み出すだけでありません。
一滴の汚水が清水を汚すように…、
そうやって生じていった濁った託宣は貴方方をも変えていくか可能性があるのではないでしょうか?」






祖谷は、祖谷が心を開いたものにはとても優しかった。
桃源郷とも言われているIYAは、
まさにその通りで、けっしてけっして嫌な場所ではなく…。
社会の中で擦り切れそうになった「自分」を脱ぎ捨て、
誰でもない「己」として心を休める「時間軸」の場であった。


爺も婆も良い方々であった。
そこには、涙が出るほど古き良き日本の「人の姿」の1つの原型があるように思えた。


だからこそ、
と、
月櫻は御方がたに向かい再び顔をあげた。
「貴方がた土地の神々にはそれを慈しみ育て、生み出している力を広げて欲しいのです。」


これも人の受け売りになるが、
『地の事は地の者でないと本当に変えられない』。


他から来る者は、アドバイスは出来るが、
そのアドバイスで今後生きていく、または生活が変化するのは「その地に住む人達」である。
外の人は外の人なのだ。


貴方方が幾ら私を呼んでも、
私は其処には「永住」は出来ない。


私は奈良を愛しているから。
何処か遠くに行っても、
長く長く離れる事があっても、
いつか帰ってくる地は奈良だから。


太古、
私は「この地」で生きた。
この大地に眠った。


この地の神々と約束をし、
そして今生やっとその約束を果たした。


だから…、
願わくば、
最後もこの地で眠りたい。


故に…
貴方の所に「巫」としては行けない。





その時、ぽん、と誰かが月櫻の肩を叩いた。


-よくぞ。後は我らも手伝おうぞ。

伊予之二名島の神々よ。
我が地に客人として来られた義、
果たすは此処までに致そうぞ。-



それは、
葛城山殿を含めた
奈良の御方々だった。







注)伊予之二名島:四国の古代名称「いよのふたなしま」という。諸説では四国は4つの地方に分かれているが、
2柱の男神と2柱の女神がそれぞれを司っており、神々は二組の夫婦であるという。
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Re: 産み出る願い-日ノ本神霊紀行その伍 

お遍路さんって、そういうシステムでもあったんですね~。

う~ん、思わずあれこれと考え込んじゃった(笑)。
  • posted by エリオン 
  • URL 
  • 2013.12/05 18:43分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: エリオンさん 

> お遍路さんって、そういうシステムでもあったんですね~。

数魂で有名な深田剛史先生は、
封印システムとして視て居られたのは著書で知っていたのですが、
私としては「ふーん」だったです(爆。

けど今回のことで降りてきて、やっぱりそう言う意味もあったんだと思いました。
悪いことではなく「和」の為なんですけどね。

見方や立ち位置で「善悪」は決められないので要注意ですが…。
  • posted by 瑚月 kogetu 
  • URL 
  • 2013.12/07 00:12分 
  • [Edit]
  • [Res]

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Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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