Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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君の名は-日ノ本神霊紀行その肆

神も腐れる時がある。


『千と千尋の神隠し』に出てきたような「お腐れ様」は本当に居らっしゃる。
それも、意外に多い。


愛したものに裏切られた神も、
待っても待っても待っても…誰も来ないうちに腐れた神も、
愛したものを奪われた神も、
死ぬことがない彼らは、それでも次元落ちして残り続ける事がある。


それぞれがキーワードとする強い負の感情だけを胸に、
永久の時間を時にはさまよい、
時には取り憑き、
時には…

***

暗闇に光る目達。
無数に伸びる手・手・手…。

何度払いのけても
必要に伸ばされる手と欲求。

-言葉を
-言葉を


月櫻は系統の親神が居ない「それ」に手を焼いていた。
「今日は半端ないな…」
その晩の咳は息つく暇もない程であり、咳き込みながらも月櫻は必死に探索を続けた。


腐れても神には系統がある。
神霊系、
荼吉尼系といった感じだ。

たまに無所属も居るが、
その場合は葬り去られたり、
帰るべき地図(珠)を取られてしまった古代神だ。


その時は、宇宙(ソラ)に返して差し上げればいい…。


所属が分かれば、
助けが呼べる。
助ける手伝いが出来る。



しかし、

天界-アッパーにも
魔界-アンダーにも
籍はなく、
そして古代神でもない。

「それ」は何処にも所属していない「お腐れ様」だった。



「外」に答えがないのなら、
自分の奥底の底の底、
「中庸」と名づけているそこまでいくしかない。

底は天であり、
ミクロはマクロである。

余り軽々しく行くと戻ってこれないし、
人として生きているのでそうそう、超高次元にも上がりたくないのが月櫻の本心である。

が、平家事件に続いてのここ連日の咳で月櫻の体力ももう限界に近かった。
今夜こそ決着をつけてやる。




光でもなく
闇でもなく
光でも有り
闇でもある


中庸の存在



月櫻はこれといった宗教は持っていないが、
自分の所属を尋ねられれば、
「中庸」を目標にしている、というだろう。


<中庸>
しかし、それはまた別名では「人」の真の姿そのものなのかもしれない。


その「場」に立ち、
答えを求めた。


電光のごとく、
あるひらめきが月櫻の脳裏に浮かんだ。


なんと…
なんということだったんだろう…

そして、
月櫻は狂気に満たされた「それ」に伝えた。



『君の名は…』



********

祖谷で通りすがりに小さな神社に出会った。
参道の階段にある狛犬が可愛く…、
つい上の方に登ってしまったが、本殿は閉められており、一箇所敗れた障子からが一つの目が覗いていた。

一つ目の神。
悪い神ではないが…。


しかし神と言うよりも、
位落ちして妖怪化したような印象であった。


特に荒ぶるわけでもなく、
控えめな感じすらするので月櫻は軽く会釈をし、
また石段を降りていった。


ふと気が付くと、
足元で二柱の狛犬がじゃれている。



もしもし、
貴方達はもしや先ほどの神社の狛犬でらっしゃらないか?。


尋ねる月櫻に狛犬は飛び跳ねながら答えた。


狛犬A「主さまが」
狛犬B「ついて行けと言った」

狛犬A「我らは外を見たことが無いゆえに」
狛犬B「外を見ておいでと言った」


狛犬A「ぬし(月櫻)は神輿じゃと」
狛犬B「ぬしとなら外にいけると」


…あの、お帰りは如何されますか?


狛犬A「主さまが大丈夫だと」
狛犬B「道が出てておるから大丈夫だと」
A・B「「言ったーーwww」」


…いえ、いいんですけどね…。
そういや、名古屋の熱田神宮でもそういうので竜道まで道を作るってのをしましたが…。


狛犬の余りの無邪気さと可愛さと、
神社の先に訪れた古民家の家の神々が気持ちが良かった為、
危機感が何時もよりも薄れていた。




どうも後で思うと、今回の祖谷の旅は、
普段とは何か違う旅だったようだ…。


故に、いいけどね。
と、月櫻は狛犬との同伴を承諾した。

狛犬たちは大はしゃぎ。
車に乗るのも初めて。
コテージに向かう渓谷の吊り橋では、
月櫻の頭の上や肩の上に登った。


あのー、人の頭の上に乗るってのは…。

狛犬A「われらは小さい」
狛犬B「足元では見えぬ」

狛犬A「高いー、高いぞー」
狛犬B「おおー、水じゃー、これが川というものかー」


…社会見学ですか…orz。
いいんですけどね…。



とにかく可愛く…。
という訳で月櫻と同伴の方々には内緒で実は
その日はそのまま日が落ちるまで一緒に過ごしたのであった。

さて、その晩のコテージでラップ音の元の平家の方々を上に繋いで、
一段落した頃に神社の主様は現れた。

『つないで下さったお礼にお手伝い致しましょう』と言うその姿は妖気はまだあるものの格が少し上がっており、
目も一つ目から三つ目になっていた。
どうも元々は三つ目であったようだ。


確かに神社の名も「三」がついていたな…と月櫻は思い出していた。
あの「三」は、神の姿見えた昔の方々がつけた名残だろうか。
とにかく、三つ目殿は平家以外の気になるものを連れて行って下さった。



それからは特に何もなく、
月櫻の中では、一風変わった三目殿が可愛い狛犬と3柱で暮らす密やかな神社…
という印象で終わっていた。


****


平家の件が終わり、咳も静まるかと思っていたが、
実際には、少し収まってからまた激烈になっていった。


帰宅から月櫻を悩ませ続けている「咳」には別件が幾つか絡んでいる事がその後わかってきた。



平家の方々が無事行った為に「使えるやつ」と思われてしまったのか、
それとも最初の古民家で家の神々が話していた「通訳不足」から薄々白羽の矢が立っていたのか…。


剣山の御方と
祖谷、
そして
三つ目殿の強烈な引き込みオファーがかかってきたのだ。


もともと剣山系は神降ろしや、
神の声を聞いて生活の基板にしていた縄文~弥生につながる文化がまだかろうじて残っている古い地域である。


その地盤を守り結界を貼ってきた剣山方の思いは、
現在となれば、強烈な「人材不足」につながったのであろう。


平家がらみの時は、
四六時中の咳で体力を消耗したが、
彼らがらみの咳は、患者様の浄化をしようとすると強烈に起こった。


どうも「アクセス体制」になると、
「われの言葉を聞け」と要求してくるようだ。
喉の一部が張り付き咳が止まらなくなるのだが、
その張り付きが水では取れない変な場所なのである。


何度治療の手を止めて、
手洗いに走ったことか…。



特に酷かったのが三つ目殿であった。
その思いは徐々に念に代わり、
少し位が上がった姿はみるみる崩れて行った。


可愛かったあの狛犬達すらも…。



暗闇に光る目達。
無数に伸びる手・手・手…。

何度払いのけても
必要に伸ばされる手と欲求。

-言葉を
-言葉を

何故にそこまで神輿(みこ)を要求する?。
浄化を要求するわけも出なく、
位上げを求めるのでなもなく、
ただただ、巫を求める。


異例だった。


あまりの執着に、
ついに滅多に行かない中庸の場まで行って教えられた事は、
ある種「月櫻のような者」には衝撃的な事であった。

彼は、
いや、彼らは…







「人」であった。







人が祀られている事自体は珍しいことでもない。
菅原道真公や、徳川家康公など歴史上の実在の人物が神として勤めを果たしている神社も多々ある。


そんな事言ったら、厳密に言えば日本神霊界の神の名は歴代の人の名なのだから、
「人」は異例ではない。

人は、
いや、魂は、ある高みを目指して登っている。


其処に山があるから登る、といった有名な登山家がいるが、
人は何かを目指す。
それが自分の内であれ、外であれ、
「変わること」を無意識に求める。


私は何も求めていない、という人も、老いという自己の体の変化を止めることは出来ない。
人の体も何もしなくても変わり続けていく。
人は変化という次元に住む「旅人」なのだ。


その変化の次元の中で「神界」というある高みに達したクライマーが「神」となる。
それも神界にも段階があり、市井の神社などで役を務めている感情をもった非常に人臭い神から、
伊勢の様にある種「大きな意識体」としての段階に上がったものまで様々だ。



だが…
三つ目殿は違っていた。


察するに神界の位に達するようなヒトでは無かったのだ…。


ある方の書で奈良時代に巫女集団が祖谷に入ったという伝承があると読んだ事があったが、
月櫻が感じ取った三つ目殿はそういう巫女達に繋がるものであったのかもしれない。




***

むかしむかし、社にはもう彼女達が祀られており、
「何かから言葉を受け取り」、その言葉を感知能力のある村人(神主代わりの方)に伝えていた。

村人がその言葉どおりに物事を行うことに寄って、
ご利益、もしくは「祟(たたり)」が収まっていた。


彼ら自身は肉体がない霊体ではあったが「祟を収めることもご利益もできない受信機」であった。
感知能力のある村人が減ってしまい、直に神社の彼らをあがめたり、要求をされることがあるが、
何も出来ないジレンマに陥った…。

もしくは…、


一番恐ろしいことだが、崇められることにより彼ら自身がいつしか「自分は神だ」と思うようになり…
そして『腐れた』

****

月櫻の様に、巫に毛が生えたような存在でも、
「何かを伝える」者は、この大いなるトラップに陥らないように細心にして最大の注意を払わなけれなならない。


月櫻はかねてから巫は「電線」または「携帯電話」であると思っている。
しかし、昨今、電線が「発電所(神)」であるように勘違いをし始めている者も多く現れている事を危惧している。


確かに、治療をしていると、つい陥りそうになるトラップである。
力を借りてやっている事を「自分がやっている」という思い…。


それが重なれば…、
彼らの様になり得る可能性は、何時でも何処でもあるのだ。



ついでにオファーをかけてきていた剣山や祖谷の神霊に月櫻は訪ねてみた。
「彼らにお告げや導きをされていたのは貴方がたでらっしゃいますでしょうか?」
答えは悲しくも「否」であった。



あの神社から神の気が無く、妖気をわずかに感じたのは、
彼らがつながっていたのが神霊ではなく…、
妖の者か、もしくは平家筋の何かを受信していたのだろうか…。



ワレ ハ ヒト ダッタ ?


月櫻は放った言葉は、
彼らを愕然とさせた。


荒れ狂う欲求も、
妖気もなくなり

そこには脱力と虚無を思わせる姿があった。



月櫻は、目を伏せ…、
同じように人から神上がりをした京都の某神社の御神にアクセスをした。


その社の神使は非常に力が強い古代の妖魔である。
無防備となった彼らの後ろにある糸をたどり、
そこに見つけた妖魔にしかるべき処理をしてもらった。



やはり神ではなかったのだな…。
二重の悲しみが月櫻の胸に湧いた。



伝えるものの最も大きなリスクは、
発してくる者が「何であるか」なのだ…。



光っていても「善」でないものもいる。
優しき言葉でも「愛」でないものもいる。
利益を与えるが膨大な見返りを求めるものもいる。
巫を媒体にして、民からエネルギーを吸い取るものもいる。



つながっていると信じていたものが、
いつの間にか「己が変わること」で変わってしまっていることもある。




冒頭に神も腐れることがあると書いたが、
人が変わってしまうことの方が遥かに多いだろう。



茫然自失している彼らを京都の某主にお任せして、
月櫻はアクセスを閉じた。





後日、祖谷のその神社が某大学の調査でレポートとして上がっているのを発見した。
神社庁を調べても記録が無かった神社であったが、そのレポートには御祭神の名が載っていた。


天児屋命(あめのこやねのみこと)
*名前の「コヤネ」は「小さな屋根(の建物)」の意味で、託宣の神の居所のことと考えられる-wikiより。


そして同じくググった「日本の神様カード」の天児屋命の姿は三つ目を連想する木の葉であり、
何よりもその言葉は今回の出来事に最後の〆をするものであった。

****

天児屋命 あめのこやねのみこと

“自分の声に耳を傾けなさい。自分の話す言葉を、よく聞きなさい。神の分け御霊であるあなたが口にする言葉は、霊力を持ち、その響きは深く浸透して、あなたの「今」を創りだしているのです。言葉の持つ力を決しておろそかにしてはいけません。
ただ自らの内にある輝く光である魂を見つめなさい。魂の声に耳をすませれば、光の道が見えてきます。私はあなたの声が天へ届くのを、そして、神の声があなたに届くのを助けましょう。”

テーマ
言霊の力 想念の現実化 言葉にすることの大切さ

*****

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Comment

かなしみ=愛しみ 

大変だったのですね…。

かなしいなぁ…哀しい。
狛犬さんたちの無邪気さもあいまって、ひたすらかなしさが。

でもそのかなしさの中に見える、人らしさがいとおしい気も、しました。
  • posted by とよ 
  • URL 
  • 2013.11/23 18:32分 
  • [Edit]
  • [Res]

Re: とよさん 

> かなしいなぁ…哀しい。
> 狛犬さんたちの無邪気さもあいまって、ひたすらかなしさが。


私も凄く悲しかったのです。
最初の思い出とその後のギャップ。
とても悲しかったです。

> でもそのかなしさの中に見える、人らしさがいとおしい気も、しました。

ありがとうございます(T_T)
  • posted by 瑚月 kogetu 
  • URL 
  • 2013.11/23 21:38分 
  • [Edit]
  • [Res]

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瑚月 kogetu

Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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