Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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『一衣帯水』 神世水奇譚:その肆

月櫻は淡い光の空間の中で、昨日の祈りの時の事を思い起こしていた。


昨日の祈りの時に見えた二本の光の帯。
螺旋を描き天に上り、そして地に戻った二本の光の帯。


大勢の人の想い(真意)と神の想い(神意)の二本の思いが交わったという意味だったのかもしれないし、
DNAの螺旋を意味していたのかもしれない。


にほん=二本であり=日本でもある…。



ブー
ブー
ブー


目覚まし代わりにしている携帯のバイブ音が月櫻の瞑想を破った。

ね…ネムイ…。
激烈にネムイ…。


しかし、今日から一週間仕事だ。
しかも予約は満員御礼と来ている。



なんとか起き上がり、カーテンを開く。
眩しく清々しい陽の光が差し込んだ。



いい朝です。




月櫻は小さな整体院を営んでいる。
人の体と心程不思議な物はなく、その病や疾患の原因の声を聴き、
その仮説に対して立証出来るように治療を施し、結果を視る。


生来の気質にも合っているのか、耳視師(じしし)月櫻は、この職業を愛していた。


そう言っている間に助手の奈桜(なお)が出勤してきた。
店の掃除を行い、開業時間までの間に茶を一服。
いつもの日課の始まりだった。



茶を飲みながら、PCで確認。
狭霧殿のつぶやきが入っていた。



『こっちは富士がすごく綺麗ですよ』


他にも今朝撮れた美しいパール富士の画像など、
何故か富士の話題がPC上に目についた。
無意識に何かを感じ取って祝っている方々なのだろう。


『けどなんだかまだフヨフヨしています。原因わかんないんですが…。
伊勢は参加されてたけど、熊野はノーマークだったからそちらかしら?』
←待て!


続きのツイートを見て月櫻はつっこんだ。



そういえば、持っていけと、強く菓子に言われて買ったのだが、
狭霧殿へのお土産の1つに熊野から熊野大社ご公認大社印のお菓子があった。

…しかし…、
確かに昨日の件で熊野は確かに参加していなかった…。


嫌な予感がする…。


『大丈夫ですか?』
『熊野のお菓子食べて、行ってみますわ。あ、けど…』



けどなんだ?



『八咫烏さんがもう迎えに来てくれてます。行ってきます』


はえぇぇ!
もう来てるのかー!!
んで、行くのか貴女はーーー!!!


突っ込もうとした時だった、
「先生!時間ですよ!」
優秀にして冷徹な助手「奈桜」の手によってPCは取り上げられたのであった。


********

「せんせー、あんな時に静岡にいくって天気予報ちゃんと見なくちゃいけないよー」
「いや、出発前は進路が違ってたんですよ(出発してから進路変更するって確信犯だったんだよ…)」


「先生、2時間半も新幹線の中って大変でしたね。」
「いえいえ、携帯もありましたし、本も持ってましたから(で、人質にもなっておりましたし)」


「月櫻さん、終電に間に合ってよかったですね」
「はい、けど2時間以上遅れたので、新幹線の特急代は後で返還してもらえるそうですし(特急代とタクシー代の余剰な出費分はしっかりカバーしてくれた訳だ。強引だけどアフターケアはしっかりしてる。流石コノハナ様)」

*******

治療に来る患者様が入れ替わり立ち替わり月櫻の静岡行きの件を話題にした。
まぁ、それだけ月櫻が今回の静岡行きを楽しみにして患者様に話をしていたという事なのだが…。
しかし患者様と話す月櫻の心の声が、もし聞こえたならツッコミ満載だっただろう。



「月櫻さん?どうしたんですか?なんか調子悪くないですか?」
昼休みを過ぎた頃から月櫻に違和感が生じていた。

微妙な変化だがそこは優秀な助手、気がついた様で僅かな治療の合間に尋ねて来た。

「…判るか?」
「分かりますよ」
「うーん…。なんか時間軸がズラされているというか…。思考鈍麻というか…。思考閉鎖というか…」



これは、
まさか、
よもや、



「脳みそが人質に取られているようだ…」
「脳みそ人質?なんですかそれ?」
奈桜はまだ静岡の件を知らなかった。


閉店時間の後、事情を聞きたがる奈桜にわびを入れて早々に帰ってもらい、
月櫻は急いでPCを開いた。
狭霧殿はどうなった?!。




『そんで結局、熊野とか四国とか沖縄とかいろいろ出てきた気がするんですけど… (遠い目』
月櫻、撃沈の瞬間であった。




『こちらは脳みそ人質になりました。』
と、返事を送るのも申し訳ない。



さて「体のパーツ」を人質に出来るのか?。
という疑問も読者にはあると思うが、答えは「出来ない事ではない」。


というか、この「身体パーツ離脱」とも言える症状は、
多くの患者様にも見られる症状である。


魂は「魂魄(こんぱく)」とも書き換えられる。
goo辞書から説明を借りると>
魂魄の「魂」は、人の精神をつかさどる気。「魄」は、人の 肉体をつかさどる気。
である。


例えば、最近では難聴の患者様を見たが、
耳の「魄」が実際の身体より10m程離れており「耳が遠い」というのはこのことか?と、
まさに文字通りの様相であった。


厄介なのは、この「離脱」がトラウマから原因を発している時である。
かの患者様の場合、現世で「聞きたくないこと」を聞いてトラウマを生じてしまったのであろう。
治療して引き寄せてもすぐに「耳」は逃げてしまい、最終的には「隠れてしまった」。



こうなると、本人のトラウマに向かわなくては行けないのはだが、
この方の場合、それは諸事情により困難で月櫻としては残念ながらあきらめざる得なかった事例である。
最終的には「本人が決める」のだから、仕方がないと言えば、仕方がないのだが…。



ちなみに、過去生などの深い要因により「離脱」ではなく、さらに進んだ「離断」が為されている場合もある。
この場合はトラウマに対するだけではなく、探索もしなくてはいけないのだが、大抵、かなり厄介な場所(次元)に在るのが殆ど…。
しかも「本人が取りに行かないとダメ」という暗黙の鉄則があるから更に厄介だ。



しかし一方で、ある身体の「魄」を身体周辺に避難させる事で、
他の身体からの悪影響を避け決定的な生命維持を図っている場合もある。



一方が「負の特性」としたら、こっちは「正の特性」と言っていいのだろうか。
しかもこの「魄の負の特性」を利用しようとする術者や魔、悪魔、魔神が居るから困ったものである。



だから「グランディング」というか、
人は精神だけではなく、自分の身体にもちゃんと意識を向けて行かないといけないのである。


って、しまった、話がそれてしまった。




つまり、そういう機構で月櫻のお粗末な脳みそも人質に取られた訳である。
こうなると人質のプロ。人権など何処にもないお話になる。
流石に月櫻も狭霧殿もこの状況は不味いと思った。


『今度人質とったら、人質だけ奪還して何もしないって宣言しました』
『ありがとうございます。こっちもそれ用の対応を宣言します。しかし今回の依頼はやらないといけないのでしょうね…』
『そうですね。中国地方と四国と九州と沖縄それぞれの担当神様ってどなたですか?』



…狭霧殿、それはまた、かなり複雑な事をお尋ねになられましたですね…。
ツイートを読んだ月櫻の目線が斜め45度上空を漂った。



気を取り直して一応書いてみる。
しかし、全部は無理なので、かなり端折っているのは致し方ない。



『代表的な所をあげれば、中国地方は南は出雲、北は厳島でしょうか。

九州は…4つ?かな。
宮崎の高天原に鹿児島の高天原、阿蘇、・・・あと1つは宇佐かな。

四国は・・・金比羅さんは鳳凰族と犬神族だったし、狐様も関係ありますしね。
後、仏界(八十八箇所)も関わりが深いです。

沖縄は久高が主ですが。石垣・宮古等は違う機構で動いてます。』


『あーえーうあー? … すみません、呼ぶ神様のお名前を直接教えて頂いてもいいですか。』



…それが言えないから地方名なんです…。
申し訳なさ一杯で月櫻はツイートを返した。

『えーと、名前の無い神様が半分以上居られます・・・。

確かにその地域地域に大和神話名を頂いている神様を祀る神社はあるのですが、
それぞれの場所が古代文化・民族の代表地みたいな感じでして・・・。


実質は富士神界や白山神界の様に、国津神名を冠したり、
天津神と併合することで名より実をとった神々が殆どだと思います。


例えば、神が降りたとされてる「高天原」ですが、
日本のあちこちに「高天原」の伝承をもった地があります。


奈良にもありますが、奈良のその地はかつて一大勢力を持った民族の地なので、
多分、「高天原」という地名自体が、大きな古代神とその文化の拠点を現しているんでしょうね』


『…』

『なので、名を呼ぶことは…じゅげむじゅげむごこうのすりきれ…って位、膨大な量になる…。
ちなみに挙げてみますか?』

『無理です』
至極ごもっともな判断である。




『現在のボケ頭では無理です』
狭霧殿、また飛んでますな…。
しかも盛大に…。
月櫻は頭を抱えた。




となるとだ、
考えなくては行けないのはこちら(月櫻)か。
しかし富士の時と違って「コンセプト」が見えない。


というか、脳みそ人質にとってるなら情報を送れ。
そう月櫻が思った時であった。
ある事が月櫻の脳裏に浮かび出た。



-籠神社でも、宮崎の高天原でもどこでも「天の真名井」はひどかった…。-



『天の真名井ってなんですか?』
『大体古い神社で水が綺麗とか言われるところには「天の真名井」という水場や祀られている所があるのです。
しかし、近寄ると、がっつりばっさりどっかんと浄化しなくちゃいけない感じがしまして…、
とてもじゃないけどやりきれなかったです。

世の中のヒーラーさんが褒め称えるの場所でもそうだったんで、
きっと私がおかしいのだと思っていました。
しかし、そうなると「水脈繋がり」で符号があう。』




…そういえば、元伊勢である丹後の国一宮の籠神社の奥の院である「真名井神社」はその最たるもので、
耳視師になりかけたばかりで訪れた月櫻には到底やりきれなかった場所であった。
確か「またいつかご縁がありましたら来ます」って行って切りの良い所で終わらせて頂いた記憶が…。



『それです!!!!。ちょっとお風呂で真名井に取り組んで来ます!』
『あ、けど多分バックには…』


真名井神社で思い出したのであった。
月櫻が、神社巡り⇒地脈エネルギーの調整⇒古代神に続いた、
「語り部」となる経過で訪れた場所場所での記憶。

「天の真名井」以外に、共通して「重い」と感じた存在があった事を。



『きっと何? 宣言しただけで半抜けました…』


ああ、もう抜けている。
シャンパンの蓋のような速さです。
誰か、安全弁つけて下さい…。

月櫻の心の叫びが聞こえるはずもなく、PCにツイートを打ち込んだ。
早く終わって帰って頂こう。

『別天津神(ことあまつかみ)の天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
- 別天津神のうちの造化三神でそのなかのトップ。至高の神です。』



*******************

『古事記』上巻の冒頭では、天地開闢の際、高天原に以下の三柱の神(造化の三神という)が、いずれも「独神(ひとりがみ)」(男女の性別が無い神)として成って、そのまま身を隠したという

天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ) - 至高の神
高御産巣日神(たかみむすひのかみ) - 征服や統治の神
神産巣日神(かみむすひのかみ) - 生産の神

その次に、国土が形成されて海に浮かぶくらげのようになった時に以下の二柱の神が現われた。この二柱の神もまた独神として身を隠した


宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
天之常立神(あめのとこたちのかみ)

これら五柱の神を、天津神の中でも特別な存在として「別天津神」と呼ぶ。別天津神の次に神世七代の神が現れた。

wikipedeiaより



***********************

『そして…』
『まだ在るんですか』
『はい。別天津神の次の世代、神世7代の代表者…イザナミノミコトです』


イザナミノミコト…、国産み・神産みにおいてイザナギとの間に日本国土を形づくる多数の子をもうけた神。
その中には淡路島・隠岐島からはじめやがて日本列島を生み、更に山・海など森羅万象の神々を生んだ。
多くの神々を生み出し、今も讃えられる夫婦神の一柱。


その一方で日本神話上では最長記録を持つ「別居夫婦」でもある。


神話が時の政権に都合が良いように改ざんされているのは当たり前の事なので、
神話の裏に隠された意味までは知りようが無いが、
月櫻が訪れた場所のいずれでもイザナミノミコトからは浄化を求めるような重い波動を感じたのだ。




『わかりました。全部一緒にやっていいですか?』
『いえ、水(真名井)が先です。』

狭霧殿が「行ってしまう」までに早く伝えなければならない。
PCを叩く手が早くなる。


『「ご神水」や川や池が名物の神社は山ほどあります。
とうことは、日本の水脈の上に神社があるってことでしょうね。
だから、まず水をやれば、色々な民族の神々も一先ずご納得されるかと思います。』

『成る程分かりました』
『その次に天之御中主様と伊邪那美様です』







しばしの間。


『月櫻さん』
『はい?』



『あめのみなかぬしさまを維持しつつナギナミさま。この鬼指令どっからきてるん?← 』


***********************

狭霧殿が「行った」後、鬱金(うこん)殿からツイートが入った。
『ああ籠神社。そこも昔の津波の生き残りだ。』


月櫻の脳裏に東北が浮かんだのは云うまでもない。



***********************


これはあくまで月櫻の独断の予測であり、
確かめようがないのだが「身を隠した」とされながらも「別天津神(ことあまつかみ)」と古事記に名を残すのであれば、それは天孫系よりも以前に統治していた、歴史上で完全に消すこと出来ない強大な勢力であり文化=神であったのだろう。

そして次の世代の「神世七代」は一説では、
一人神(性別がない神)から次第に男女に別れ、異性を感じるようになり、最終的には愛を見つけ出し夫婦となる過程をもって、男女の体や性が整っていくことを表す部分だと言われている。



雌雄同体、もしくは性別を持たない人類から、
雌雄別体、性別を持つ人類への変化という大きな変化があったのではないだろうか。


これは日本だけではなく、
ギリシャ神話には雌雄同体の「アンドロギュノス」が分離して「男女」になり、
互いの半身を求めて恋をするようになったと云う話もある。


また、余談だがシャーリー・マクレーンが自身の過去生からの体験を書いた「カミーノ ― 魂の旅路」では、
雌雄同体の人類から性別を分けた人類が創りだされた話が載っている。


ま、余談だがね。
ただ、天之御中主様と伊邪那美様が日本の文化(神世)変遷の中で大きな節目を担って居られるのは確かなのであろう。





こんな逸話がある。

*************

川上から子供が流されてくる。
子供を確実に救えるのは、流れてくる子を余さず拾い上げることではなく、
川上に行き、子供を川に放り投げているものをやめさせることだ

*************


日本中にある神社はそれぞれの「神流」がある。
各神社の格によって、その神流の中の直属から眷属までの「担当者」がその神社を担当されている。


狭霧殿がやっておられることは、一番上位の階層の神格を上げる「位上げ」であろう。
そこが上がれば、下流の神社も変わってくる…。


水路のつまりをとり、
大和神話で辿れる神流のなるべく上流のエネルギーを上げることにより、
神々の神気が必要な人々の元に流れやすくしたのであろう。




しかし、末宮まで流れを替えられるほど上流の神様の位上げができるのは、
狭霧殿レベルじゃないと無理であろう・・・。



私では絶対無理だ。
というか、そこまでやったら私では戻ってこれないだろう。


月櫻は何処をみるという訳でもなく、
しかし、何処かに居るであろう狭霧殿を思い、目を閉じた。



…ちゃんと帰ってきてくださいね~。
狭霧殿~(涙。



つづく>>>


一衣帯水>

1)一本の帯のように狭い川や海、またはそれによって隔てられていること。
2)たとえ隔たっていてもそのことが互いの往来の防げとはならないという意味で用いることが多い

中日辞典(小学館)より
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Comment

Re: 『一衣帯水』 神世水奇譚:その肆 

寝る前に続きを♪と読ませて頂いて撃沈しましたw
どこまでもリンクしてるんですね。。。
昨日書かせて頂いた、宮古島の映画、
冒頭は熊野から始まるんです。。。
昨日読ませて頂いたとき、熊野がないなぁ、
と思ってはいましたが、まさかここまでリンクしてるとはw
本当に壮大な事になっていたのですね。
お疲れさまでございました。

一応、映画のサイトのリンクを貼っておきますね。
ご興味がありましたら、どうぞ。
http://sketchesofmyahk.com
  • posted by 銀河 
  • URL 
  • 2012.10/15 02:21分 
  • [Edit]
  • [Res]

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瑚月 kogetu

Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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