Voiceless world ー魂魄白日夢奇譚ー

Voiceless world of the voice to you 声無きものの聲をあなたに。      人の不思議(魄)と白日夢の如き奇譚(魂)の物語

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『背水の陣』 神世水奇譚:その弐

あれは…なんだろう?。
目の前に浮かんでくるものに月櫻は目をこらした。
「目」といっても実際の目で見えるものではない物を見ようとしているのだが。


岩の間をぬうように穴がある。
洞窟?。
細い、蛇が通るような印象の穴。
人が通れるとは思えな穴。
それをずっとずっと…奥へ奥へと「意識」は進んでいく。


突然、視界が広がった感じがした途端、
意識が本体に弾き戻された。


一瞬かいまみたもの。
それは暗く底がない…果てのない闇が広がる場所。
しかし、無ではなく何か…、そう、普通のものではない何か大きなエネルギーの存在を暗示させるような
場所であった。



寝る前のまどろみの中、
何故そんなものが見えたのか再び考える間もなく、
今度は安らかな眠りの中へと月櫻は吸い込まれていったのであった。




それが「風穴」であり、明日という長い長い一日の予告であったことに気がつくのは、
まだまだ先の話であった。



***********************

ごっほっ! がっっっ!!! 



がたん、ざぁぁぁーーーーーーーーーーー。



「原因は第12オーラ…だ…と…?」
便座の前の壁にもたれかかりながら、月櫻は青い顔でそう呟いた。



ここは御殿場「時之栖(ときのすみか)」という温泉・ホテル・名産品・レストラン・アトラクションなどが揃っている集合施設の公衆トイレの一室。


「具合はどうですか?」先に出ていた狭霧殿が心配顔で尋ねてきた。
「ちょっとからえづきしたら、少し楽にはなったが…。狭霧殿は大丈夫ですか?」
「私は大分戻って来ました。何か食べますか?。高原ビールは?」
「いや、今飲んだら、違う意味でリバースです。」


その時、急に大粒の雨が激しく降りだした。
周囲の人々は我先にと雨除けを探して走りだした。


とうとう台風の勢力に入ったのだろう。


「とにかく座りましょう。こちらへ」
走ってたどり着いたの場所は、雨もしのげて人気のないところだった。


…人払いずみか。
月櫻は心の中でそう呟いた。


近くの椅子に二人で腰を掛けた。
「…身体系オーラ(第1・5)には支障が全くみられない。…第12オーラに反応ありと出た」


車に酔った時のような頭の違和感と吐き気に息をつめながら、
月櫻は自分の中で起こっている異常についてのサーチ結果の続きを話した。


「第12オーラ。一般的な人のオーラは第7番目までなので12番目は存在しないオーラですが、8~12番目までのオーラに支障がある場合、「憑依」など1~7番目のオーラで示唆する「身体」「精神」では現れない原因が示唆されます。私はそれを治療の手がかりにもしているのです。」

「12番目は、私の定義では『見えない存在による神経的侵略』が原因による症状を指すのですが…。どうもおかしいのですよ。微妙な違和感がある。似ているけど違うのです。何が原因なんだ…」


月櫻は苛立って居た。
今日の夕方には奈良に帰らねばならない、めったに会えない狭霧殿との貴重な時間を体調不良で台無しにしたくはない。



しかも、
それが「身体的(自分的)原因」で無ければなおさらである。
何か自分以外の外的な要因でなっているとしたら、KY以外の何物でもない。



「月櫻さん」



青い顔で原因の探索を続けようとしている月櫻を見つめながら狭霧殿はこう言った。






「…人質にとられたのでは?」






*************************

御殿場に来る前に、二人は富士山須山口五合目に行ってきたのであった。
そこで、木花開耶姫を祀る「古御嶽神社」に参拝してきた。


もともとその日の予定は違っていたのだが、
車を出してくださる方の篤行により、思いがけず富士の地を踏むことが出来たのであった。
関西を出発時には思いもしなかった台風の進路変更により天気は思わしくなかったが、
駐車場から下に広がる霧がまるで雲海を思わせ、それはそれで充分に富士の趣を醸し出していた。



ちなみにその日の外界の気温は29度。
富士五合目の気温、15度。
半分である。
あざみの中でも最も大きな種である富士薊(ふじあざみ)がここかしこに咲いていて、しっかり秋から初冬を思わせる雰囲気だった。




さ、さむいーーー。
予測していた以上の寒さに狭霧殿とドライバー殿、月櫻は震えながらも周囲を散策した。



「この先にお宮があるんです。ちょっとご挨拶していきますか?」
狭霧殿の案内で進んだ登山道はもう閉山になっていたが、
登山口から50mほど登った古御嶽神社までは通行が許されていた。


閉山している為か、小さい社は閉ざされ鍵がかかっていた。
「お留守のようですね」月櫻は狭霧殿に言った。


「せっかく来たのですから、ご挨拶したいですよね。お呼びしましょうw」
(おおおおおおおおおおお???????)と驚く月櫻をシリ目に
「はい、お呼びしました」と狭霧殿は先に挨拶を終わられて後ろに引かれてしまった。



驚きはしたものの、そうそう簡単に来る事が出来ない場所である。
ご挨拶の機会も今度いつあるかわからないと思うと、
素直にありがたくご挨拶させて頂こうと月櫻は思った。


目を閉じると、なるほど…、
先程は誰も何も居られなかった空間に何か大きな存在があった。


末は大きな白い布が波打つようであり、その上方は白く輝き無限の広がりを感じさせた。
「形」や「人がた」として月櫻の視覚フィルターには映し出されなかった。


大きな大きな存在。




祈りを終え、帰る時は今までの寒さはまったく感じなくなり、
足取りも軽く「地ビール楽しみですよ」と話していたのだが


登山道を出て土産屋の並びに出た瞬間、
今までのあったかさは何だったのだというような、
凍てつく風と寒さに襲われた上、小雨まで降りだしてきた。



やっとの思いで駐車場に来た時だった、
それまで流れは早いものの、厚く垂れこめた雲の合間に青空が覗いた。


ちょうど皆の頭上に、
ぽっこりと楕円の様に丸い蒼い空。
綺麗な蒼い色だった。



「なんか嬉しいですね…」
そう、喜びながら下山してきたのだが…。



何故か下山途中から、月櫻と狭霧殿は気分が悪くなってしまったのであった。
帰りがけに贈られたあの空の蒼い丸は、まるで何かの合図の様で嬉しく、その御蔭で寒さを吹き飛ばしたのに…。



そう、確かにあの「蒼」が合図であり次の符号(フラグ)であった事がその後に判るのであるが
月櫻と狭霧殿にとっては「次」よりも目の前の「今の問題」の方が重要であり…、
そして、先ほどの話に戻るのであった。




**********************

「まだ富士にリンクしてませんか?」沙霧殿は言葉を続けた。
昨日の件が脳裏に浮かんだ。
嫌な予感だ。
いや、嫌な確信と言ってもいい。


「…またですか?今度は私の『願い』ではなく、私自身を人質に?」
月櫻は気が遠くなりそうだった。
いや、事実、精神の半分以上が何処かに行ってような感覚であったが。


「もう!!!、できる事はさっきのお参りの時にやったのにー!!」
狭霧殿がめずらしく叫んだ。
その途端、ふっと月櫻の気持ち悪さが軽くなった。




「・・・軽く・・・なった・・・?」


と同時に月櫻の脳裏に、何かに拉致られている上位意識の自分の姿が浮かんだ。
人質疑惑が人質確定に決定した瞬間であり、第12オーラ障害時の新たな「意味」の誕生でもあった。




そっか…、
第12オーラに支障が見えた時は「見えない存在に人質になっている」って意味があるんだw。
って、こんなこと早々在るわけないじゃないか!!!!。
なんだこれ、つっこみすら…虚しい…。



昨日、自分の願いを質草に取られてブルーになったのに、
今度は自分自身を人質にされて、沙霧殿に仕事をさせてしまうとは…。
ブルーを通り越してお先真っ暗とはこの事である。
ずっぽりと落ち込んでいる月櫻に対して、狭霧は口を開いた。



「ヤルならやっちゃいましょうw」



月櫻の黒をオール白に一気にひっくり返す、
沙霧殿必殺の「オセロ返し天城越え」とでも云うような強さであった。
流石です沙霧様…。




「少しは軽くなりました?良かったw。じゃ、お食事にしましょうw」
やっぱり流石です狭霧殿…。




しかしドライバー殿も居らっしゃる訳で、
何も食べないでこのパークを出るのも申し訳ないし、
せっかく名産品を取り揃えたここで何も食べないもの確かにもったいなさすぎる。
それに、これから何をさせられるかのは分からないが、
膨大なエネルギーが必要になるのは予測しうる事であり腹ごしらえは必須であろうと思われた。



ビュッフェ、中華料理、ドイツ風レストラン…外にある各店のメニュー表とニラメッコした挙句、
一軒のレストランに入った。

地ビールが売りの店だ。

本来ならば、ここで地ビールをぐいっt…(涙。
握りこぶし両手グーな状態の月櫻がどれだけ悔しがったか、
ここではとても筆で書き表せない程であったとだけ述べておこう。


それでもあっさりしたパスタが食べれそうな位に回復したのは、
人質に対する富士の温情だったのかもしれない。





「で、どうしたらいいんですか語り部さん、通訳してください」
ああ、デジャブ…。
月櫻の脳裏に昨日ことが再び浮かんだのは云うまでもなかった。



「分かりました。ちょっと待って下さい…」
<視点と意識>をちょっとずらす。

その気になった途端、色々な映像や情報が流れこんできた。
それが大体、どういうモノか判った時、


「…orz」


月櫻はフォークを持ったまま、頭を抱え込んだ。


「どうしたのですか?」
「沙霧殿・・・」
顔を上げた月櫻の口から深い溜息がもれた。
「はい?」





「・・・・・これは・・・大仕事ですよ・・・」


*************************

ドライバー殿が車をとりに行ってくれている間に、
月櫻は大まかなあらましを狭霧殿に伝えた。


迎えに来た車は二人を乗せ、台風の雨の中、
一路新幹線の駅がある三島市に向かって走りだした。



車の中で、話は急いで進められた。


「それは…、大きな事ですね…。」
「はい。そして、私達だけなく、なるべく多数の人の意志が関わる方が良いように思います。
鬱金殿にもご協力をお願いしようと思います。」
「鬱金殿ですか、それはいいですね。是非お願いしたいです」
狭霧殿は大きく頷いた。




鬱金殿は「風」のような方である。
事実、伊勢神宮風の宮の神、シナツヒコ殿と懇意であり、
鳳凰族とも深い繋がりがある。


鬱金殿は「兄弟子」という名目でかつて白夢奇譚に登場しておられるが、
きちんと説明すると「兄弟子」といっても狭霧殿の弟子ではなく、
狭霧殿が主とされる神流と、ちょうど裏表に相対する大きな紳流を主とする全く別の神流のお方である。


本来なら、その流れの師範なり主なり名を冠する立場であり、
月櫻も師として仰がせて頂きたいと再三願った方であったが、
生来の気質か、

「上はいやだー。師範?めんどくせー」

とするりするりと交わされてしまい、月櫻の敬意は「兄弟子」という形で現在は落ち着いているという状態である。


狭霧殿が一目も二目も置く方であり、狭霧殿と今のような御縁をもつに至ったのも「鬱金殿と知り合いである」事がきっかけの一つであった。


「あと、狭霧殿が懇意にされている方々にも是非ご協力をお願いしたいです。
人は各々、深い神縁を持っておりますが、ちょうど沙霧殿のご友人方は良い感じにそれぞれの神縁をお持ちと拝見いたしました。
神縁=先祖となるわけですが、今回、日の本に関するそれぞれの大いなる一族の方々がなるべく参加してもらえる方がいいように思うのです。」


「いいですね。しかも早く事を起こさないといけない気がします…。時を尋ねてみて下さい。」
「日時ですか。今日は満月十五夜にして、半年の終わりの日ですね…。月…ボイド…、そうだ、ボイドタイムはどうなっていますか?」


「ああ、ちょうど知人が月の事の記事をHPにアップしてます。月のボイドは今は終わってますが、
ゆっくりしていると他の星がボイドにはいりますね。」
「という事はボイドをさけろって事は確実ですね。」


なんたるベストタイミング。というか、見えない連携プレー…。
となると、今回の「人質事件」は、あっちこっちの神縁による確信犯だな…。
と月櫻は改めてため息をついた。


「月櫻さん…」
「は?どうしました狭霧殿?」

「私…」
「はい?」

「もう半分抜けてそうです…」
「うわーーーー!?。もう何処かに行ってるんですか?」


狭霧殿は大仕事で膨大なエネルギーを使う場合、上次元に精神体が上がってしまう。
これは一種の安全弁であろ狭霧殿だけでなく大きなエネルギーを扱うものには多々見られる現象の一つである。
使うエネルギーの質量が大きければ多いきいほど、
「人」という器の中ではエネルギーが許容オーバーになるために「エネルギーにあった器の次元」に上昇していってしまうのだ。


しかし、狭霧殿の場合はそのエネルギー量が比類なき桁外れっぷりなので抜けっぷりも尋常ではない。

それをよく知る月櫻や鬱金殿は、狭霧殿が「人」として生きていることを忘れてしまうほど飛んでいってしまうのではないか?と普段から逆に心配しているほどであった。


その心配している当人が人質になって吹っ飛ばす原因になっているのだから、
もう月櫻はいたたまれない状態であった。


「頭、はたらきませ~ん。皆に伝えないといけないのに…」
「私が新幹線の中で皆様方に今回のことをお送りします。語り部ですしね…。狭霧殿はどうやって皆の思いのエネルギーを集約するかという方法と、時間を考えていただけますか?」
「う~ん。。。がんばりますが・・・、考えられるかしら~」



ダメだ、飛んでる。
なるべくここで話を詰めておきたいと思うが実際に話し合える時間もタイムリミットを告げた。



三島の駅が見えてきた。



「何時新幹線が止まるかわかりませんので、来た新幹線にお乗りになる方がいいと思います」
駅の女性職員の言葉に、狭霧殿との別れの挨拶も慌ただしく、月櫻はちょうど駅に到着した「こだま」に飛び乗った。




新幹線の座席にすわり、携帯を取り出した。
「無事のりました。一号車の前の席に乗れと上から言われましたよ。」
「ああ、一番前にコンセントがあるから、それで携帯の電源は確保ですね」
「いや、電源がなくなるほど使いませんよ…」




狭霧殿と挨拶のメールを交わしたあと、月櫻は行うべき「大仕事」に対する「協力嘆願メール」を書き始めた。
こだまは三島を出発し、関西に向かって進んで行った。




富士山、いや、もしかして日本からとも言えるその願い、それは「道」を通す事であった。
前日、柿田川でやった「土地神の位を上げ、水のつまりを流す」ことはまさにその予行であったのだ。
最初はその由を聞いた時、月櫻は富士の位上げを行い、水脈=神気の流れを改善する事かと思った。
しかし、富士の真意はさらにその願いの向にあった。





「東北の位上げを」
それが今回の最終的な依頼であった。




その依頼の時に、昨晩のまどろみの中で出てきた穴が再び目の前に現れた。
それは「風穴」であった。




富士から東北にかけては、本来神流的な「風穴」が通っているらしかった。
三嶋大社の時に顔みせをした伊勢神宮は風宮のシナツヒコ様は、今回、その風穴を再開する御役目と共に、
今まさに日本に上陸した台風に対し被害を押さえる為に来られたそうであった。
その手伝いも依頼に含まれていた。




ここまでを思い、書きかけた所で新幹線は次の停車駅へと到着し、
同時に室内にアナウンスがかかった。



それを聞いた月櫻は苦笑した。
そして皆に送るべく書きかけていたメールを一度保存し、
沙霧殿に新たにメールを書いて送信した。




『人質は静岡県から出して貰えないらしいよ』



静岡県掛川駅。
売店のない小さなこだまの停車駅で、
月櫻の乗った新幹線はいつ終わるともしれない「拘束」に入ったのである。





つづく>>>


背水の陣>
1)水辺を背にして陣をしけば、退却できないことから、決死の覚悟で戦に臨むこと
2)決死の覚悟で事に当たること。

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Comment

更新ありがとうございます 

瑚月さんが、普通の旅行が出来る日がありますように(ー人ー;)
  • posted by ルンルン 
  • URL 
  • 2012.10/13 10:03分 
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瑚月 kogetu

Author:瑚月 kogetu
本職>某病院異端リハビリスト。
特技>体を含めものの声を聴く
焼き肉や鍋の時に同僚に重宝される特技でもある)。

東洋系治療と自然農法に興味あり。
『美しく生きる』を考えたい人。

ブログの中の私が体験した白日夢の奇譚は、患者様の特定を防ぐために整体師・耳視師という設定の中で「月櫻(つきお)」さんに小説:白日夢奇譚という形で語って頂いております。
飽くまで本職は病院勤務で整体院は営んでおりません。
ご了承下さい。



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